「koekko」は、メディアアーティスト・小宮知久氏のために設計した、テント型の歌唱デバイスである。GPS・温湿度・布の動きといった環境情報をリアルタイムに読み取り、パフォーマーの声の母音やピッチを微細に変調する。装置はパフォーマーに対峙する「もう一つの口」として機能し、二つの声がわずかにずれながら重なり合うヘテロフォニーの歌がその場に立ち上がる。
アーティスト本人が一人で組み立て・運用でき、機内持ち込みが可能なサイズであることがデザインの条件であった。世界各地でこの装置を用いた歌唱を収集するという作品の性格上、どこへでも運べる構造が不可欠だった。
テントという形式は、その両方を満たす。折り畳めば小さく、展開すれば身体を包む空間となる。布は風や湿度に揺れ、それ自体が環境センサーとして作品に組み込まれている。可搬性と空間性、機能と詩性——koekkoはあらゆる2つの世界のその境界に立つデバイスである。
※小宮知久協力作品
https://chikukomiya.com/koekko
支援:令和7年度文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業
撮影:古澤龍
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